【感想】示談交渉人―交通事故の恐るべき舞台裏 吉田透

 大まかな内容

この本はですね、主にある個人の損害保険代理店が関わってきた、事故の示談交渉や損害保険会社に関することが書いてあります。

 

率直な感想

ここ10年以内とかでは考えられない

この本は、類としては〇〇の事件簿的な感じの本です。細かく幾つもの話が書いてあります。

ただ言えることは、相当昔のことが書いてあるといった印象を受けました。

理由は、後にも書きましたように業界人の常識からすると考えられないようなことが書いてあるからです。

 

弁護士法72条に違反している疑義

本書著者は、示談交渉はサービスの一環と捉えているようでした。そして、通常ほとんどの保険会社が公式にその業務を委任しているところは無い点や弁護士法72条についても触れられていたのでした。

弁護士法72条では、要件を満たす人以外が、報酬を得る目的で、反復継続的に代理行為などを行うことを禁じています。禁じている程度としては、紛争状態になっているものとする立場と、全般的にとする立場があります。また、報酬を得る目的については、直接受け取らなくても、無償でそれを提供することで間接的に利益を得るような場合も含むとするのが有力な説です。

ですが、本書著者の主張では、報酬を受けとらずに無償でやればなんら問題はない。それもサービスのうちと考えている。ということでした。しかしそれは、良く面倒を見てくれるから契約を頼むという顧客も当然存在するはずですから間接的に利益を得ていることになります。また、そのようなエピソードも本の中身にありました。従って、弁護士法72条に違反しているという疑義が強くあります。

 

誤解を招きかねない

わたしは、裁判官ではありませんし、捜査当局でもありません。ですが、同業者として言えば、この本の内容は、一般の方に誤解を招きかねません。

人に喜ばれるからと言って、運転免許を持たないものが、顧客の送り迎えをしたらいかがでしょうか?

これを称賛する人はまずいないでしょう。

この本に書かれていることも同じことなのです。

 

損害保険事業と役割分担

そして、一番懸念することとしては、一般の方が勘違いをし、損害保険代理店は普通に示談交渉をすると思われることです。そう思われてしまったら、やらないことがとんでもないみたいな認識になりかねません。また、何もしてくれなかった・・・。みたいに思う人も普通にいるでしょう。

わたしは、損害保険の仕事をしています。しかし、示談交渉を正式に引き受けている同業者など聞いたことがありません。また、損害保険会社でもそういったことまで損害保険代理店に頼んでいるところは聞いたことがないです。いろいろと法律や保険会社の都合の問題もあるわけですが、損害保険事業は、ある程度の役割分担で行われています。大きく分けると、引受支払いです。損害保険代理店は、主にその引受、つまり、契約事務を主たる業務として損害保険会社から契約上引き受けているのです。

 

プラニングやアドバイスに特化

ですから、我々としても、よろずやのようにあっちもこっちもやって、何でも中途半端といことではなく、プラニングやアドバイスをしっかりやることで、顧客を満足させることに大半の時間とエネルギーを使うようにしているのです。また、事故処理については、保険会社との間に入ってもいわゆる伝言ゲームのようになり、効率的でない面があります。ですから、我々は、その経験から基本間に入らずに必要に応じて相談に応じたり、調整役に入ったりするようにしています。

それと、何十年も昔からやっている人から、昔は今ほど損害保険会社のSC(事故を処理し、保険金の支払いをする部門)も充実していなかったので、大変だったみたいな話を聞いたことがあります。ですから、もしかしたら今よりは連携して解決まで持っていくケースはあったのかもしれませんね。少なくともここ10年どころではなく、大分前の話でしょう。

 

最後に

ということで、フィクションとしての読み物なら、一つの作品として捉えればいいです。しかし、本書はノンフィクションの本ですから、同業者としては、ちょっと微妙なところがありますね。そういうことなので、今も昔も示談交渉は損害保険代理店の業務ではありません。ですから別に手を抜いたり、意地悪をしているわけではありませんので一般の方は誤解の無いようにお願いします。

 

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