そもそも示談交渉は保険会社から依頼されていない
今回は以前、保険会社のアンケート経由で届いた意見とそれに対する、わたし(当社)の考えをご紹介します。
目次
1.Kさん(福島市在住、男性、54歳、自動車保険)のコメント
1.Kさん(福島市在住、男性、54歳、自動車保険)のコメント
万が一事故を起こした場合には、担当の保険事務所を頼りにします。その際は、まず、そこに電話をしますが、その時は親切な対応をして欲しいと思っています。
それから、事故の内容の確認だけそこの保険事務所でやって、あとは契約している保険会社で対応というのはとんでもないです。
2.わたし(当社)の考え
2-1.親切な対応を当然努めています
基本的に実際にあったことについてのご意見なのか、今後事故が起きた場合の気持ちで、実際にあったわけではないのかハッキリしませんが、親切な対応を望んでいる方は、多いと思いますし、当社としてもある程度親切な対応をするのは、当然だと思いますので出来る限りそのように努めています。
2-2.そもそも示談交渉は保険会社から依頼されていない
それから「あとは契約している保険会社で・・・。」ということですが、そもそも保険事務所の主たる業務は、契約事務になります。従って、たまに誤解されている方がいらっしゃいますが、双方の過失割合(事故の当事者同士の責任の割合)の交渉や賠償額の交渉、修理代金の交渉などについては、取引保険会社との契約上、通常どこの保険事務所も引き受けていないのです。従って、事故の際の直接的な交渉については保険会社との契約上も保険約款上も保険事務所の義務としても権利としても明記されていません。
従って、それをやらなければならないどころか、やることになっていないのです。要するに、野球などで言えば、そこのポジションは頼まれていないわけです。ですから、やっている人がいるように思っていらっしゃる方は、単に保険会社との仲介役になり、伝言的な感じでやっているためにそのように思っているのではないかと思います。
2-3.当社の方針:伝言ゲームになるので基本やらない
そして、現在当社では、これまでの経験も踏まえ、さまざまなメリット、デメリットを総合的に判断した結果として、基本は、事故の受付をし、あとは、仲介役はやらずに、保険会社の事故の担当者と契約者の方で直接やりとりをする形をとっています。あとは、上手くいかない場合など必要に応じて、要請があれば、それぞれの相談に応じたり、調整役に入ったりするようにしています。そうしないで仲介役にやたらと入れば、変に伝言ゲームのようになり、話しが正しく伝わらず、トラブルにつながることや、一々人を介すため非効率になり、スピーディーに進まなかったりする恐れがあるからです。
2-4.法律で禁じられている
また、仮にそういったことまでやるとしても、これは現行の法律では、主に弁護士法の第72条という法律の条文がありますが、要するに、これで禁止している行為にあたる可能性が高いわけです。
なので、現在日本で登録を受けている全ての損害保険代理店では、通常、直接的な交渉業務は、やりたいとかやりたくないに関わらず、やっているところは存在しないはずです。(その人自体が弁護士等の場合は別です。)従って、もしいれば、違法性の疑いが高いです。ちなみに同法72条では、刑事罰も定められていますので、場合によっては、懲役刑ということもありえます。(立派な犯罪です。)
というわけで、実際に法律の制約などなければ、もう少し要請に応えていくという判断も当社や他社でもあるかもしれませんが、法律で決まっている以上難しいのです。
2-5.直接報酬を得なくてもアウト
それから、報酬を受取らなければ違法にならないと思っている方がいますが、この法律では、直接受取らなくても、間接的に利益になるような、例えば、我々みたいな業者が、サービスで示談交渉をやれば、当然やらないところよりも差別化になりますから、仕事を頼まれ易くなる可能性があります。従って、間接的にはトータルでみると報酬を得ているような格好になりますから、こういった間接的なケースでもアウトなのです。
2-6.保険会社の義務は保険金を支払うこと
それとついでに言いますと、これもたまに誤解されている方がいらっしゃいますが、保険会社の契約の履行は、事故があり、保険金の請求を受けた場合に速やかに保険金を支払うことなんですね。
言われると解るって方も結構いらっしゃいますが。
なので、交通事故の示談交渉は、保険金を速やかに支払うためのサービスの一環的な感じでやっているわけで、やるのが別に当たり前ではないわけです。逆に当事者の了解が無い場合は、出来ないように約款上も通常なっています。
2-7.保険金を支払うための示談交渉
何を言いたいのかと言いますと、たまにですね、いわゆる弁護士的なものを求めてくる方がおられるわけです。
それで、例えば人身事故の場合では、免許が傷つくので、相手のところに行って、警察に人身事故の届けを出さないよう交渉して欲しいとか、言う人がたまにですがいます。
むしろ届けは義務なので、保険会社がそういったことをすることは出来ませんし、保険金を支払うためという目的にあっていませんので、守備範囲外になるわけです。
ですから、そのような要請があった場合は、伝言する程度は承りますが、激しく交渉するみたいなことは守備範囲外ということになります。(別に意地悪をしているわけではありません。)
2-8.保険会社と弁護士の違い
・保険会社の保険契約上の義務:保険金を支払う → あくまで保険金を支払うことが主目的。そのためにサービスで示談交渉を行う。
・弁護士:顧客の依頼により、問題解決 → 保険金を支払うためではないので、保険会社とはそもそもとして違う。
2-9.自分が払う金額は自分でということで決着
あとですね、これは最高裁判所等の判決がでているとかではないようですが、損害保険会社が当時示談交渉サービスを始めた際に、やはり縄張り意識が働いたのか日本弁護士連合会(以下、日弁連)が激しく抗議をしてきたらしく、先ほども書きましたような点(弁護士法72条)を言ってきたのだそうです。
それで、話し合った結果、保険会社も自分のとこが保険金を払うわけなんで、自分が払う金額は自分で話(交渉)させてくれということで、保険金を支払うことを目的として、話がまとまったそうです。ちなみに、その時に文書で覚書みたいな類のものを交わしたようなことも聞いていますが、その中には、それぞれの地域だか、営業所ごとに顧問弁護士を置いて、必要があればその人達を活用するみたいなことも確認したそうですよ。
3.最後に
ということで大変長くなりましたが、日本は、法治国家でいろいろとルールが決まっていますので、自由に出来ないことも結構ありますので、予めご了承下さい。
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