【生保悪用】逆養老保険で6,000万円脱税の疑い 名古屋国税局が告発
昨日辺りから、生命保険を悪用し脱税したと話題になっている。
・法人向け生命保険を悪用し脱税か 名古屋・緑区 東海地方のニュース – 名古屋テレビ【メ~テレ】
・設備メーカーが脱税疑い=社長、2億円を個人口座に—名古屋国税局 – WSJ
・生保悪用、6000万円脱税疑い 名古屋国税局がメーカー告発:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
・逆養老保険、節税効果で人気 税務トラブルも:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
事件の概要
法人向け生命保険商品の一つ「逆養老保険」を解約して戻ってきた約二億円を所得から除外し、法人税約六千万円を脱税したとして、名古屋国税局が法人税法違反の疑いで、金属加工機械メーカー「SEG」(名古屋市緑区)と屋嘉比(やかひ)淳一社長(56)=東京都渋谷区=を名古屋地検特捜部に告発したことが分かった。
※ 中日新聞さんからお借りしました
という、ちょっと解り辛い事件ではある。記事を読むと、契約の途中で、社長個人に名義変更して、直ぐに解約したということ。で、解約時の契約者は、社長個人だったから、生保会社は、その社長個人に解約返戻金を振り込んだと。
で、そのお金について、税務上の手続きを何もしなかったようである。
解約返戻金の原資
ほんど触れられていないが、これがもしも、保険料を個人でも何年間か払っていたとなると、また、ちょっと複雑になってくるだろう。しかし、ほとんど直ぐ解約したと思われる。
だから、解約返戻金が支払われた原因というのは、名義変更前の契約者 → その法人がお金(保険料)を払っていたからなのであって、社長個人が払っていたわけではないのである。
なので、国税当局的には、「それ、お前の金じゃねーだろー」的な。つまり、法人の収益に計上し、申告すべきものを、しないで、隠したという解釈なのだろう。
ただ、税の専門家ではないが、名義変更した時点で法人 → 社長個人に保険という資産が移ったわけなので、社長に対する所得税という見方の方がシンプルで解りやすく、かつ自然な感じが・・・。
ちなみに、少し余談だが、その場合は、役員報酬などについての、法人の損金算入の可否について、内容によって取扱が異なるようなので、法人への法人税と社長個人への所得税と両方の可能性も。
逆養老保険について
あまり、法人の節税関係の案件がないせいかもしれないが、実は、この逆の付いている養老保険ってのを、初めて聞きました。正直、別に恥ずかしくもないが・・・。
で、普通の養老保険って言うのは、昔から郵便局でもどこでもあるようなやつで、
・保険のスタートから満期までの間に、死んだら(高度障害も)いくらという保障
・満期までに何もなかったら、いくら(満期保険金)
というような感じで、満期保険金は大体払ったぐらいは貰えるのが一般的。なので、特に増やしたいとかでなければ食いっぱぐれはないのだが、保障額を大きくしたい場合は、月の払いも大きくなってしまう。
で、これの逆が付く養老保険があるということ。
中日新聞さんの記事に以下のように出ていた。
<逆養老保険>貯蓄と保障双方の性質を併せ持つ養老保険の一種で、被保険者が保険期間内に死亡するか、生存して満期を迎えた時点のいずれかに同額の保険金が支払われる。一般的な養老保険の法人契約は、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、満期保険金の受取人は法人。逆養老保険は死亡保険金が法人、満期保険金が被保険者と組み合わせが逆になっている。
ということで、整理すると以下の感じ。
【一般的な養老保険の法人契約】
・死亡保険金の受取人 → 被保険者の遺族
・満期保険金の受取人 → 法人
に対して、
【逆養老保険】
・死亡保険金の受取人 → 法人
・満期保険金の受取人 → 被保険者
と組み合わせが逆になっているということ。で、WSJさんによると、
逆養老保険は料金を全額損金扱いでき、企業の節税に使われることが多い。
ということ。全額損金算入できるんだ・・・。
で、一応「逆養老保険」でググって見ました。そしたら、出てくる出てくる。
この辺 (リンク切れ)とか、この辺 (リンク切れ)が解りやすかったんだけど。途中で解約した場合のデメリットが大きいようだ。つまり、その場合、結論だけ言うと、個人にはお金が入らないので、課税だけされたままになってしまうと。。。
あと、途中での税務に関するルール変更のリスク。それと、単に役員報酬でやった場合と、この逆養老を使った場合のシミュレーション(こちら (リンク切れ))をみたんだけど、それによると、節税効果は、ケースによっては、それなりにあるようではあった。
ただ、5年間。5年先とか読めないよな・・・。それと額にもよる。つまり、年辺り600万の税金が、450万ぐらいで済んでいる計算であるが・・・額が小さくなればなる程メリットが小さくなる。
少しまとめると、
・途中で解約した場合のデメリットが大きい(個人には課税だけされる)
・契約途中での税務に関するルール変更の可能性
・節税効果は、ケースと額によっては、それなりにありそう(なので、逆に言えば・・・)
という感じになりますな。あと、保険会社によっては、逆の養老保険は引受けないところもあるようだった。とりあえず、そこまで興味もないので、自分の関係先には、確認していない。
いずれにしても、メリットだけではない
自分は、法人税の節税に生命保険を活用するっていうことについては、あまりナイスな手段だとは思っていない。なぜなら、デメリットもそれなりにあるからだ。急遽入用になって早くに解約したら、戻りが少なくなるというリスクもあるし。
この逆養老に関して言えば、その他個人に課税だけされて終わってしまうという点も見逃せない。
もちろん、商品によっては納税時期を遅らせることで、税率が下がったり、繰越欠損金も含めて、赤字状況により、早めに払ったのよりも税金を納める額が少なくなることはあるだろう。
自分なら、あまり前向きには考えない
上述のシミュレーションのように年間約150万。5年で約750万の節税というのは、たしかに魅力はあるだろう。しかし、メリットとデメリットは常にセット。
総合的に見て、自分ならやるかな?と考えると、正直微妙なんだよね。なんか面倒くさい。その割にメリットが小さい。しかも、一般の人が良く解らず勘違いをして、正しい取り扱いをしなかったがために、こんな風に騒ぎになったりもするかもしれないし。
当時、この担当者がどんな説明をしたのかは判らないけど、騙すつもりで騙したとかでなければ、後味は悪いはずである。いくら丁寧に説明をし、自分には、一切の非がないとしても、後味は良くないはずだ。
非とかそういう問題も関係なくはないが、相手を満足させてなんぼの商売をやっていれば、普通、まともな人であれば、非がなくても残念でしかたがないものである。
というようなことまで考えると、余程相手が望んでいる場合でもなければ、相談されても提案する気にはならない。
最後に
自分なら、余程ジャマになるぐらいなら、株でも買うかな(当然、課税)。あと、寄付したり。もちろん、ボーナスを出すということも働きに応じて考えるわけだが・・・、というか、税金普通に払えばいいじゃんみたいな・・・。
生命保険って、個人の場合は、相続税の非課税枠があるので、相続税対策にはいいんだけどね。というか、この事件って、そもそもとして、逆養老とか何とかって前に、単にごまかした(申告しなかった)って話で、別に逆養老は特別関係ないんだよね。笑 そもそも、ごまかしたって話なんだから・・・。
たまたま、それが逆養老だったと。個人で急に入用になったのかなんか知らないけど、だったらはじめから、節税なんか考えずに役員報酬でもらってればいいのにと普通に思う。まあ、結果論だが・・・。
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